期間:2012年8月10日〜9月初旬(展示中)
場所:立川のセレクトブックショップ、「オリオンパピルス」
● 企画・展示:暮らしの自由研究室+丹羽朋子
● 協力くださった方々: 下中菜穂さん、岡本年正さん、
山内明美さん、川上英里さん、松田牧惠さん、土井清美さん、その他皆々さま
*ブログ「一芯社の自由帖」
*オリオンパピルスの「棚っていいとも!」のサイト http://www.tanatteiitomo.jp/
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みなさんのお宅やふるさとでは、どんな「お盆」をしますか?
神も先祖も祀らぬ家に育った私にとって、
これまでお盆は連休以上のものではありませんした。
そんな私が「お盆」=“死者の魂を迎えて送ること”の重みを痛感したのは、
3.11の震災後に宮城県南三陸町に通い始めてから。
昨 夏、「仮設」に移った住人たちは、
初盆の魂が迷わぬよう入口に大きな高灯籠をたてて亡くなった家族やご先祖を家々に迎え入れ、
魂送りの灯籠や盆船を河に流 してあの世へ魂を送り出しました。
「送り火」
——次にめぐり来る季節の再会を思いつつ、流れゆく灯籠をいつまでも目で追う人々の連なりは、
時計が刻むのと は異なる多様な時が入り交じり、
あらゆる境界が曖昧になったような、切なくてやさしい、穏やかな眺めでした。
哲学者の内田節さんは、
祭や季節の行事によって、生者・死者・自然が巧みに結び合う自治や助け合いのしくみに、
日本の伝統社会の知恵をみていますが、
生者の力や時間軸を凌駕する巨大な災害や原発事故と向き合う私たちが、
ご先祖の想像/創造力に学べることは多いと思います。
私が文化人類学のフィールドワークを重ねた中国農村では、
死者は「地下=あの世」と「この世」を気ままに行き交う身近な存在。
晩秋の墓参りには先祖に冥界仕様の冬服やお金を供え、
折々に山に爆竹を轟かせ大地の神々と挨拶を交します。
このときフッとその場に漂う、
大地に包まれるような不思議な安堵感がなんとも心地よく、いつも羨ましくなるのです。
今回の〈盆棚〉には、「トロンコ」や「盆船」など東北のお盆の供物に加えて、
中国やメキシコの紙モノの供物、ペルー・クスコの石など、
さまざまな死生観を反映した世界の「お盆」グッズを飾りました。
これと合わせて「お盆」や風土と一体化した各地の暮らし方に関する参考本、
被災地や支援活動で出会った友人たちに聞いた3.11後に読んだおすすめ本等を並べて、
みんなの読書カードを挟み込んでみました。
3.11から1年5か月、忘却のスイッチが入りかかった今年の東京の夏に、
ささやかな〈盆棚〉が「あたりまえの日常」を問うきっかけになるといいな、と思いつつ。
暮らしの自由研究室+丹羽朋子(文化人類学研究/一芯社図書工作室)