「落語にもウソがあるように、紙切りにもウソがある。」
稀代の紙切り芸人と言われた、故二代目紙切り林家正楽が弟子に語ったというこの言葉は、
パフォーマンスとしての切り紙の醍醐味を言い得て妙だ。
寄席の色物の一つである「紙切り」は、
縁起物や芝居の場面など古典的なものから、
客の要望に応えて流行りのアニメ・キャラクターやアイドルに至るまで、
様々な題材を白い紙から切り出していく伝統芸。
明治初めに、一人の幇間(男芸者)が、
江戸時代の座敷芸を寄席の芸に仕立てたのが最初だとされる。
人気に火がついたのは戦後、テレビ番組で初代紙切り林家正楽や二代目が活躍してから。
二人はともに、落語家を目指して入門したが、強い訛りに苦しんだ末、
紙切りに活路を見いだしたのだという。
“これが本当のカミ技です”を口癖に、
ユーモアたっぷりに見事な紙切り芸を披露した二代目正楽は言う。
「きれいに、上手に切るのが紙切りじゃない。
スピーディに切って、切ってる間もお客さんを楽しませる、それが紙切りだ。」
[参考:桂小南治・林家二楽『父ちゃんは二代目紙切り正楽』、 2000年]