中華圏の葬儀や墓参りで、
冥界の祖先に贈るたくさんの紙銭や豪華な日用品を模した紙細工が
燃やされることはよく知られる。
たとえば中国の陝北農村では葬儀中、
村の長老女性たちが死者の遺体の傍らで、
白い紙を丸く切り取り、中央に穴をあけただけの紙銭を作る光景が今も見られる。
この地域では出棺時、たくさんの切り紙細工をほどこした長い紙を垂らし、
上に紙で形づくった鶴を載せた「引魂幡」と呼ばれる旗幡が、 墓への列を先導する。
この時、女たちは大声で泣きながら、沿道に手作りの紙銭をばらまきながら参列する。
これは近寄ってくる無縁仏の霊や悪霊を鎮めるためだとも言われる。
これらの儀礼で使われる紙モノの多くは、
「焼化」、つまり燃やされて消えることで、
あの世に届き、目的の働きをしてくれると考えられる。
厄除けや病送りの祈祷に使われる紙製のヒトガタ(人形)もまた、
焼かれることを旨とする紙モノだ。
陝北の招魂儀礼では、
蛇腹折りにした黄色い紙に子どもの姿かたちを切り出して、
病人の身体をその紙で撫でて病を移し、燃やしてあの世に送ると同時に、
抜け出た病人の魂を元の身体に呼び寄せる。
日本でも、紙のヒ トガタに自分の名前を記して息を吹きかけ、穢れを移して、
神社に納めたり、川に流して無病息災を祈る風習が各地にみられる。