上海美術映画製作所(上海美術電影制片厰)が
60~80年代にかけて製作したアニメーション映画は、
水墨画、セル画、人形、そして剪紙(切り紙)といった民間芸術の伝統を取り入れて、
その高い技術と独特の柔らかな風合いが、世界中の人々を魅了した。
なかでも1981年公開の『猿と満月』は、台詞がない影絵芝居のような美しい剪紙アニメ。
軽妙なBGMとともに、
猿の群れが、空にのぼったまん丸お月さまをどうにか掴み取ろうと、
悪戦苦闘するコミカルな世界が描き出される。
木々の剪紙を幾重にも重ねて黒い影のみで描き出される野山の中を、
起毛してふわふわした質感の紙から切り出された、
色とりどりの剪紙の猿たちが駆け回る、その表情や動きがなんとも愛らしい。
[参考・図版:『上海アニメーションの奇跡』映画祭パンフレット、 2010年]