地方によって「きりこ」や「彫り物(えりもの)」など、
様々な名称で呼ばれる正月飾り、神楽などの切り紙細工。
今でも神の依り代や神仏に捧げる御幣や吉祥柄の縁起物として、
全国でその土地の風土に合った多くのかたちが作られている。
作り方には大きく分けて、
和紙に図柄を切り透かした平面的な切り紙と、
和紙を折って複雑な切りこみを入れた立体的な切り紙があるという。
各地の花祭では意匠に富んだ切り飾りが作られるが、
たとえば岡山の備中神楽の演目では、
木枠からたくさんの細長い御幣を垂らて天井から吊るし、
精霊が飛んでいるように上下にゆらゆらと動かすそうだ。
神の降臨を、紙が揺れる優雅な動きで視覚化するドラマチックな仕掛けだ。
今では白一色で作られることが多い切り飾りだが、
五行を象徴する五色で作る場所もあり、
特に古い神楽では、かたちのなかにも、
神道・陰陽道・道教・修験道といった多様な信仰の混在が見られるという。
[参考:三上敏視『神楽と出会う本』、2009年]