震災以降、ラジオから、いつもよりたくさんの詩が聴こえてくるように思います。
日々の穏やかな暮らしや、
人々のあたたかなやりとり、
美しい自然とともにある大地、
大切なものに気づき、愛しむたくさんの声が響いています。
地球へのピクニック
谷川俊太郎
ここで一緒になわとびをしよう ここで
ここで一緒におにぎりを食べよう
ここでおまえを愛そう
おまえの眼は空の青をうつし
おまえの背中はよもぎの緑に染まるだろう
ここで一緒に星座の名前を覚えよう
ここにいてすべての遠いものを夢見よう
ここで潮干狩をしよう
あけがたの空の海から
小さなひとでをとつて来よう
朝御飯にはそれを捨て
夜をひくにまかせよう
ここでただいまを云い続けよう
おまえがお帰りなさいをくり返す間
ここへ何度でも帰つて来よう
ここで熱いお茶を飲もう
ここで一緒に坐つてしばらくの間
涼しい風に吹かれよう
『地球へのピクニック』銀の鈴社
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本を作ること、家具制作やグラフィク・デザイン、芸術作品を創作すること、
そして文化人類学の研究をすること。
私(ニワ)自身と、私の近くにいる人々が生業(なりわい)としている仕事は、
人々が生死の淵に立たされるような大災害や事故が起きた時に、
いつも自他から大きな問いを突きつけられる。
こんな時に、こんなモノ作っていていいのだろうか?
こんなことやっていて意味があるのだろうか?
医者である我が妹のように人の身体を助けることはできないし、農業はじめ食べ物を作ってくれる人たち、生活必需品を流通させてくれる人たち、インフラを守っていてくれる人たち・・・
そのどれにも、緊急時の必要性としては足元にも及ばないだろう。
しかし、せめて古今東西の人間の営みを見つめて、
人々が生き抜くことをめぐってこれまで蓄積されてきた人々の知見を本や作品のなかに探し、
それと同時に、今起きていることを記録・整理して、後の時代の人々や他国の友人達に伝えることくらいはできるかもしれない。
空を仰ぎ、星を見上げ、風を感じて、大地や海からたくさんの恵みをもらって生きていること。
その素晴らしさを、大切さを、震災を乗り越えた私たちが改めて共有できるように。
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4月初めに、待ちに待った一芯社の最初の大仕事が刊行されます。
災害のただ中を経験した私たちの次の一手は?
一芯社がみずからの芯を探す、新たな試行錯誤の旅が始まります。
(ニワ)
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